引戸枠の小さな小さな知恵

設計者です。

まだまだまだ扉(建具)の話を続けます!

まず、引戸の種類は前回説明したように3種類あります。この家の収納に使用している引違い扉は開閉回数が出入口扉に比べ少ないので、リーズナブルな「戸車方式」としました。「敷居滑り方式」に比べ、扉は戸車で動くので力がいらず、メンテナンス的にも下部レールのゴミの除去等ぐらいで容易です。ただし勢いよく扉を開けてしまうと木枠に扉があたって音がしてしまうのと、扉が跳ね返ってしまって隙間ができてしまうのが欠点です。そこで、木枠に少しだけ工夫が施されています。

扉の厚み分だけ扉が当たる枠に彫り込みがしてあるのです。

そうすることで扉を締めるときに枠との間に多少隙間があっても光が隙間から漏れたりしません。

さらに、マニアックな視点で見ると、扉が反ってしまったり、木枠と扉が平行ではなくなったときでもこの溝の深さがある程度あれば隙間が生じません。(つまり、扉の上側では枠にピッタリとくっついているのですが、下側では隙間があいていても、完全に閉まっている状態と同じ効果となる。極端に書くと下の右図のようになっても木枠に彫り込みがあれば多少の狂いがあっても吸収される)

いまは外部に使われている扉はアルミサッシがほとんどですが、昔は全てが木製建具でした。その時の引き違い戸はすべてこのように扉の厚み(専門用語では見込みという)が枠に彫り込まれておりました。屋外であれば上記以外にも水の侵入を防ぐ役割もあり、当然のようにどこの家でもこうした加工が枠に施されていました。しかし、今はこうした知恵はどんどん既製品に置き換わり、失われてしまっているのが現状です。

ぜひ、ご自宅の引き戸の枠を見てみてください。

ー豊かな自然環境と都市の利便性が両立できる生活拠点ー

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