引き込み戸

設計者です。前回取り上げた回遊動線で重要だと書いた「引込戸」についてマニアックな視点からご説明します。まず、「引込戸」とは扉が壁の中に仕舞われて、閉まった時に邪魔にならないようになる扉のことです。

誰もいない環境で家事をするには扉がないほうが、荷物を持って両手が塞がっているときなど開け閉めの手間がなく便利です。しかし、夜になると「個室にしたい」、「明かりや音を他の部屋伝えたくない」、「冷暖房する箇所を制限したい」など、扉があるメリットもたくさんあります。そこで、この引戸の登場です。開けると完全に見えなくなるので存在感がなく、初めてこの部屋に来る方にとっては扉があることに気がつかないぐらい扉は仕舞い込まれるようにしています。一般的な引込戸は引き出すために取手分の10センチ弱が常に見えている状態が開け切った状態なので常に扉が見えてしまうのですが、ここでは扉の小口(こぐち)に回転取手と呼ばれる扉を引き出す金物をつけ、完全に扉を仕舞い込んでも引き出せるようにしているのです。そんな小さな工夫が、開放的な家が季節や時間帯によって実現できるよう私たち設計者は枠詳細図等をたくさん書いて設計を進めています。

なお、この扉(建具とも言ったりします)は全て特注製作です。扉の素材はオーク(ナラ)の突板で仕上げており、小口面にはオーク無垢板が4ミリ貼られています。入っているガラスも不透明の強化ガラス(強化ミストガラス)でオーナーのこだわりが反映されています。ここでは既製品建具では実現できない仕上げと納まりを紹介しました。こうした小さなこだわりが家の質を作っていくと信じて設計者はフルオーダーの家を設計しているのです。


ー豊かな自然環境と都市の利便性が両立できる生活拠点ー

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