2Wayソフトクローズ

設計者です。

まだまだ扉(建具)の話を続けますね!「神は細部に宿る」というのは有名建築家の言葉ですが、扉だけで設計者は何時間も話せてしまうものなのです。

しかしながら、この扉は、一般的に使われているのは大手メーカーさんが作成する新建材(おもに木目等がプリントされた商品)と呼ばれる既製品の扉です。カタログの中よりデザインや寸法バリエーションを選択、発注、大工さんが取り付けます。正面からビスで止めても見えないような工夫があり、扉が反ってしまっても簡単に調整できるようになっています。つまり誰でも簡単に取り付け、調整が可能と、もう職人さんの腕が問われにくい仕様になっています。確かに便利ですが、既製品なので、工夫したりなどのカスタマイズができません。また、今まで培われてきた日本の指物( さしもの)、挽物( ひきもの)、曲物( まげもの) 、組子(くみこ)の文化が使われないので、廃れつつあります。(設計者自身も特注建具の図面が書けない人も多いですし、和室を作れない人も多い)しかし、この家ではすべて建具屋さんの手仕事でオーダーメイドとなっており、枠図などすべて書いて、その箇所箇所でよりベストとなるように検討、制作されています。実はこの建具や枠は様々な工夫ができるのが設計の奥深いところでして、設計者の腕が問われる部分の一つなのです。

さて、この家(マンションの一室)は玄関扉以外全て引戸です。この引戸がどのような構造で動いているかをご説明したいと思います。

まず、引戸は大きくは3種類あります。一番古くからあるのは襖などに使われている「敷居滑り方式」です。扉が木下枠に薄く掘られた溝の中で動きやすいように竹などの敷居すべりが使用されているものです。木上枠は溝が切られており、建具がそこにはまりこんでいることでブレ止めになっています。

次に2番目は「戸車方式」です。床部分にV型形状等のレールがあり、そこのレールの上を扉下部に仕込まれた戸車がまわって動きます。上部は「敷居滑り方式」と同じです。

最後の3番目は「吊戸方式」です。扉を吊れように上枠にレールがあり、扉にはレール内を走る吊り車が設置されています。下部は扉底面に溝が掘ってあり、床からでている突起がそこにはまってブレ止めとなっています。

以上3種類ですが、この家では「吊戸方式」を主に採用しています。(収納扉は別)理由は動きやすいのと、引込戸ではこの「吊戸方式」がベストなのです。他の方式ですと下枠にレールや溝が必要で、それらが壁の中に入り込んでしまうので、この溝やレールにゴミなどが詰まったときメンテナンスができないのです。さらにこの家では「2Wayソフトクローズ」という吊り車を使用しています。扉の開閉時に扉が開けきる直前、閉め切る直前に扉のスピードが自動的にゆっくりとなるようダンパーがついており、「バチッン」と枠に当たることがなく、スーッと開閉ができるのです。最近はキッチンの引出しなどでこのソフトクローズをご存知の方が多いかと思いますが、かなり快適です。ぜひ、一度内覧にきていただき、扉の開閉をしてみてください!


PS1

吊り車のところにあるこのネジは調整用でして、これで高さなどが調整できるようになっています。

PS2

上級者の方へ問題です。この扉は間口よりも大きな扉が入っています。なので、閉めたときに隙間がありません。扉は壁が出来上がった後から入れるわけですが、どのようにこの扉を設置したのかわかりますか?難しくはないのですが是非考えてみてください!!

ー豊かな自然環境と都市の利便性が両立できる生活拠点ー

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